相続税にはどんな控除・特例制度がある?川崎の専門税理士が概要を紹介

相続税には、いくつかの控除・特例制度があります。これらを活用するかどうかで、相続税額が大きく変わります。相続税専門の税理士に頼れば状況に合わせて対応してくれますが、知らなければ損をすることになりかねません。今回は主要な8つの控除・特例制度について、その概要を紹介していきます。

相続税の主な控除制度

相続税の主な6つの控除制度を紹介していきます。

基礎控除

基礎控除は、すべての相続に対して適用される制度です。次の計算式で算出した金額を、相続の課税対象総額から控除することができます。

控除額 = 3,000万円 + 600万円 ✕ 法定相続人の数
基礎控除の計算方法

基礎控除を反映した相続税額の計算方法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、気になる方はご覧になってください。

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配偶者控除(配偶者の税額軽減)

配偶者控除とは、被相続人の配偶者の生活を守るために設けられている制度です。配偶者が相続した課税対象額が1憶6千万円以下であれば相続税は発生しません。1憶6千万円を超える場合は、法定相続分の相続税額までは課税されず、超過分に課税されます。税額控除というよりも税額軽減と言える制度です。ちなみに法定相続分とは、民法で定めている財産分割割合の目安です。

配偶者が相続した課税対象額が1憶6千万円以下の場合
 控除額=全額


配偶者が相続した課税対象額が1憶6千万円を超える場合
 控除額=法定相続分の相続税額
配偶者控除(配偶者の税額軽減)の計算方法

法定相続分については、こちらの記事で解説しているので、詳しく知りたい方はチェックしてみてください。

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未成年者控除

未成年者控除とは、相続人が18歳未満の未成年である場合に適用される控除制度です。ひとり立ちするまでに学費や養育費がかかることを加味して、18歳になるまでに残された年数に比例した金額を未成年者が負担する相続税額から控除できます。

控除額 =(18歳-相続時の年齢)✕ 10万円
未成年者控除の計算方法

相続する未成年本人の相続税額から控除額を引ききれない場合は、未成年の扶養義務者の相続税額から控除されます。

障害者控除

障害者控除とは、相続人が障害者である場合に適用される控除制度です。障害者の日常生活における特別な負担を加味して、85歳になるまでに残された年数に比例した金額を障害者が負担する相続税額から控除できます。計算方法は未成年控除と似ていますが、一般障害者か特別障害者かで控除額が変わります。

相続人が一般障害者の場合
 控除額 =(85歳-相続時の年齢)✕ 10万円

相続人が特別障害者の場合
 控除額 =(85歳-相続時の年齢)✕ 20万円
障害者控除の計算方法

相続する障害者本人の相続税額から控除額を引ききれない場合は、障害者の扶養義務者の相続税額から控除されます。

相次相続控除

相次相続(そうじそうぞく)控除とは、10年以内に2回以上の相続が相次いで発生した場合に、一部相続税を軽減する制度のことです。

例えば祖父が亡くなって、その子(父)が相続をしましたが、父がその10年以内に亡くなった場合、同じ財産に対して10年間に2回の相続税を支払うことになります。これは財産を引き継ぐ父の相続人としては大きな負担になってしまいます。そうした事情を加味して設けられた制度です。

以下計算式で求めた金額を各相続人の相続税額から控除されます。控除額は、前回の相続が発生してから1年を経過するごとに10%減額される仕組みです。

控除額 = A ✕ C / (B - A) ✕ D / C ✕ (10 - E) / 10

 A:今回の被相続人が、前回の相続で課せられた相続税額
 B:今回の被相続人が、前回の相続した純資産額
 C:今回の相続で相続人の全員が取得した財産の純資産額
 D:今回のその相続人が取得した財産の純資産額
 E:前回の相続から今回の相続までに経過した年数
相次相続控除の計算方法

贈与税額控除

贈与税額控除とは、相続税と贈与税の二重課税を避けるために設けられた制度です。生前に贈与を行うと、贈与する財産に対して贈与税が課されます。一方で、生前贈与した財産でも一定の期間内に行われたものは課税対象となるので、そのままにしておくと同じ財産に対して二重に納税することになってしまうのです。そのため、加算された贈与財産に係る贈与税額相当額を、相続税額から控除できます。

相続税の主な特例制度

相続税の主な特例制度の概要を2つ紹介していきます。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人の宅地等に対する財産評価額を下げる特例制度です。

被相続人の宅地等に100%課税されると、配偶者や子供など、残された親族が相続税を支払えなくなる場合もあります。そうすると、配偶者や被相続人と同居していた親族が住んでいる宅地等や生計を立てるために事業・貸付に供している宅地等を手放さなければならない状況に追い込まれる可能性があります。こうした状況を避けるために設けられている制度です。

宅地等の評価額を80%か50%下げることが認められています。評価額を下げる割合は宅地の面積や利用区分によって変わります。

居住用の場合(特定居住用宅地等):限度面積330m2までは減額率80%
個人事業用の場合(特定事業用宅地等):限度面積400m2までは減額率80%
会社用の場合(特定同族会社事業用宅地等):限度面積400m2までは減額率80%
賃貸用の場合(貸付事業用宅地等):限度面積200m2までは減額率50%
小規模宅地等の特例の減額率

納税猶予の特例

納税猶予の特例は、農地などを相続する人を対象とした特例制度です。

広大な農地を相続することになったとき、相続税を払うことができず、先祖代々受け継いできた農地を手放さなければならない状況に陥る可能性があります。そうなると、日本の農業の不安定化を招くことになります。そこで農地を相続する分については、相続税の納税を猶予することを認めているのです。

農地以外にも猶予特例が認められているものに、非上場株式、山林、医療法人などがあります。どれも相続のタイミングで手放す人が増えると、社会が不安定化するものです。納税猶予の計算方法は複雑なので、お近くの相続税専門の税理士に相談してみてください。

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