【事例紹介】不動産の遺産分割を円満に解決 ~権利と責任~
分割協議において、相続人同士の主張が強く、なかなかまとまらない場合があります。例えば「この財産は譲れない」「これ位の割合は財産がほしい」といった状態です。多くの人は分割協議で揉めたくないと思っていますが、いざ相続となると、お互いに妥協できないポイントも出てきます。
私は川崎を拠点に、相続専門の税理士事務所を運営しています。当税理士事務所は「円満・円滑サポート」というサービスを提供しており、必要な情報提供や主張の整理をして意見がまとまるよう手助けしています。今回は、生前にご相談があったG家の事例をご紹介します。
置かれていた状況
G家の場合は、ご両親が健在な状態でご相談を頂きました。家族構成は70代のご両親と子2人です。お兄様はご両親と同居し、妹様は遠方に家庭を持って暮らしていました。ご両親の財産は約1.5億円。その内訳は、預金に比べて不動産(自宅と賃貸アパート)が大きく、平等な分割は難しい状況でした。
ご両親としては、不動産をお兄様にすべて相続させたい想いがありました。しかしお兄様が「このままだと将来、遺産分割で揉めるかもしれない」と感じて、ご両親に税理士への相談を勧めたのがキッカケでした。
解決方法
不安に感じていることを聞き切る
まずはご両親と兄妹の全員が参加する場を設け、不安に思っていることを直接聞いていきました。しかし、相続で起きるトラブルを一通り思い描けている人はいません。「相続人同士で揉めるかもしれない」程度のものです。そこで私から、「将来こういうことが起きるかもしれません。それに対してどう思いますか」といった問いかけをしていきました。
このプロセスは非常に重要で、医者で言うと診断にあたります。親と子、それぞれが置かれている状態や、思い描いている将来を理解することで、適切なアドバイスができるようになります。また親と子それぞれの考えを関係者で共有することができます。
権利と責任について理解してもらう
G家の場合、相続人同士で財産の権利を主張し合い、意見が折り合わない可能性がありました。そこで私から冒頭に、権利と責任の話をさせて頂きました。
権利とは財産を相続する権利、責任とは家族に対して果たすべき責任です。
できるだけ多くの財産を相続したい気持ちは誰でも同じです。また、親のこれからの生活を支えるという責任もセットで考える必要があります。G家の場合はご両親がご健在だったので、「財産を相続する権利とご両親の老後の生活や介護など、面倒を見る責任を加味しながら分割について話し合うのはいかがですか」といった話をさせて頂きました。
G家ではお兄様がご両親と同居して身の回りのサポートをしていたこと、妹様が遠方でご両親の生活を支えることが実質的にできないことから「財産を平等に分割するのは難しく、お兄様が多めに相続するのは仕方ないだろう」という方針をまとめることができました。
不動産を現金化して分割割合を調整
G家の場合は月に1回集まり、約半年間コミュニケーションを重ねました。最終的に、お兄様が6、妹様が4くらいの割合で遺産分割するという道筋をつけました。しかし現状では不動産(自宅と賃貸アパート)の割合が大きく、仮に不動産を全てお兄様に分ける場合は8:2になってしまいます。そこで賃貸アパートをご両親が亡くなった後に現金化して、6:4に分割することで最終決定したのです。
まとめ
今回の遺産分割のポイントは、ご両親が健在な状態で分割協議ができた点です。
ご両親が話し合いの場にいたからこそ、子のご両親に対する責任を軸に話し合いをまとめることができました。またご両親が亡くなる前に、相続人の双方が納得できる遺産分割の方法を決めることができました。
子はご両親の相続・生活・家族関係に対する本音を聞き、更に遺産分割の不安も無くすことができました。これにより、心の中にわだかまりを抱えることなく、生前にしっかりご両親に向き合えるようになったのです。
当税理士事務所は、これからも川崎を拠点に、できるだけ多くの方に、円滑・円満な相続のサポートを提供して参ります。