【事例紹介】生前贈与は良いきっかけ!~相続人同士で揉めるリスクを回避~
今回ご紹介するのは、生前贈与がきっかけとなり、将来的に発生する相続のリスクに気付けたA様の事例です。ご相談を頂いた当初は「生前贈与による節税」が主な目的でした。この記事を読んで頂いている方のなかにも、「いまのうちに生前贈与していけば、節税になるのでは」と考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
A様も同じで、「本当に節税になるのか」「どれだけ節税になるのか」「生前贈与をすれば相続税の節税をすることができるので自分の家族の場合はどうだろうか」ということを知るために、川崎に拠点を構える当税理士事務所にお声がけを頂きました。しかし掘り下げていくと、「生前贈与だけでなく、他にも考えないといけないことがある」ことが分かりました。生前贈与を検討しようとしたことがきっかけとなって、将来的なリスクを把握し、対策ができるようになった良い事例ですので、詳しくご紹介します。
置かれていた状況
A様のご両親は健在で、2人で川崎市内に住んでいます。またお兄様もおり、仕事の関係で神奈川県外にマイホームを購入し、家族と住んでいました。
A様自身は30代男性で、川崎市内にお住まいの会社員です。結婚されていて2人のお子様がいますが、そのお子様たちが大きくなってきたため、賃貸マンションが手狭になり、自宅を購入することになりました。ご両親に相談したところ、自宅購入費の援助を受けられることになり、生前贈与の形で預金を受け取ることになったそうです。
ご相談を頂いた理由
当税理士事務所には、A様が一人で来所されました。相談することにしたのは、自宅購入の贈与の具体的な手続きを確認したかったことと、今後節税のために生前贈与を検討していることが理由でした。世の中では「生前贈与は節税になる」「できるだけやった方が良い」という声を耳にするものの、「自分の家族の場合はどうなのか」ということを具体的に知っておこう、と思ったそうです。
生前贈与による節税効果
A様の場合、ご両親から自宅購入費の資金援助を受けることは、既に決まっていたことでした。今回の手続きの要件や今後どうすれば節税効果を最大化できるのか、逆にあまり節税効果がないやり方はどういったものなのか、を詳しく説明しました。
お兄様との遺産分割の際に問題になる可能性
節税のため、今後もご両親からA様へ生前贈与を検討したいと話をしていた時から、相続専門の税理士として気になっていたのが生前贈与について「お兄様は了承しているのか」ということでした。A様は住宅資金の援助や今後の生前贈与についてお兄様に伝えた方がいいと思いつつ、特に話を通さず進めようとしていました。このように情報共有せず進めることは兄弟間のトラブルになることをお伝えしました。
贈与に関する考えを伺うため、後日、A様と共にご両親にもお越しいただきました。ご両親はA様のためにもなるし、節税にもなるだろうし、「良かれ」と思って生前贈与をする予定で、お兄様へは相続の際に調整をしてもらえばいいと思っていたようです。
しかし、相続のタイミングでA様に多額の預金を贈与したことが分かり、お兄様が不公平感を持ち、財産の分割協議で揉めるも考えられました。実は、親が良かれと思ってやろうとしていることが、子にとってはそうでもないことは多々あります。
全ての財産を把握して遺産分割を計画
A様とお兄様で、遺産分割の不公平感が生まれるリスクをA様とご両親共に認識することができました。一方、自宅購入は決まってしまっているので、いまさら生前贈与を止めることもできません。
そこで私から提案したのが「生前贈与はするとして、全ての財産について、お兄様とどう分けたいか考えましょう」ということでした。財産目録を作り、預金と不動産の保有状況を数値化した上で、相続または生前贈与で、公平な遺産分割をできるかどうか、整理するということでした。
現在は、A様とご両親そしてお兄様を交えて、財産目録の作成と、A様の自宅購入費の援助の生前贈与も踏まえた財産の分割計画の作成を進めています。結論はこれからですが、相続時に生前贈与が発覚して、「知らない間に贈与していたのか」と揉めるよりも、良い結果になるでしょう。
まとめ
生前から親子が集まって情報共有し、しっかり想いを伝えあうことで、相続の準備を進められます。面倒に感じるかもしれませんが、相続時に揉めるよりも、かかる時間も感情的な負荷も、軽くなるはずです。当税理士事務所は、今後も川崎を拠点に、円満・円滑な相続のご支援を続けていきます。生前贈与や生前対策を考えたいという方は、ぜひお気軽にお声かけください。